おやすみ「冬の旅」より（シューベルト） バスバリトン ハンス・ホッター

おやすみ　歌曲集「冬の旅」より　ヴィルヘルム・ミュラー作詞　フランツ・シューベルト作曲
Gute Nacht　Winterreise　Op.89、D 911　Wilhelm Müller　Franz Peter Schubert
バスバリトン　ハンス・ホッター
Bassbariton　Hans Hotter
ピアノ　ジェラルド・ムーア
Piano　Gerald Moore
ハンス・ホッター
ドイツ帝国のオッフェンバッハ・アム・マインで生まれました。高校を卒業後、ミュンヘン大学で哲学と音響学を学び、宗教音楽家を目指してミュンヘン音楽大学でピアノとオルガンを学んでいましたが、1929年にヘンデル『メサイア』のバス独唱の代役を務めた際に、マッテウス・レーマーに歌手としての才能を認められ、声楽を師事します。1930年トロッパウ（現：チェコ領オパヴァ）でモーツァルト『魔笛』の弁者を歌ってオペラデビュー。それ以前にすでに22歳のとき、ワーグナー『ジークフリート』で「さすらい人（ヴォータン）」を歌っていたとも言われています。
1932年にはブレスラウ（現ポーランド領ヴロツワフ）とプラハ国立歌劇場、その後1934年にハンブルク州立歌劇場、1937年にはバイエルン国立歌劇場と契約。ここでは35年以上在籍し、50年にわたって実質的に出演してモーツァルトとヴェルディも数多く歌いました。その間、彼はミュンヘン、ウィーン、シュトゥットガルト、ハンブルク、シカゴなど主要な歌劇場でも活躍しました。
1947年にはロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場でデビュー。1950年メトロポリタン歌劇場にデビューし、ワーグナーの諸役をその後数シーズンにわたり演じました。1952年から1966年の間、彼はバイロイト音楽祭に15年連続して出演し、ワーグナーの多くの作品を歌っています。また、ザルツブルク音楽祭やエディンバラ音楽祭にも出演。1972年にはパリ国立オペラ座で再び舞台に立ち『ワルキューレ』のヴォータンを歌い、その後もウィーン国立歌劇場やスカラ座などでも時折舞台に立ち、印象的な存在感を与えていました。2001年2月リヒャルト・ホイベルガー『オペラボール』の王子リージェントが彼の最後の演目となりました。
1955年にホッターはバイエルンの宮廷歌手の称号を受けています。
また、1977年にはウィーン国立音楽大学の教授に任命されました。
ホッターは幅広いレパートリーを持っていましたが、とりわけ偉大なワーグナー歌いとして広く認められ、『ニーベルングの指環』の神々しいヴォータン、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の慈愛に満ちたハンス・ザックス、『パルジファル』のグルネマンツ、『さまよえるオランダ人』のオランダ人など主要作品の要となる役柄において高い評価を得ました。
ホッターはオペラの舞台のほか、バッハの宗教曲、シューベルト、シューマン、レーヴェ、ヴォルフ、リヒャルト・シュトラウスなどのドイツ歌曲においても、その洞察力に富んだ解釈で深い感動を与えました。特に1954年にジェラルド・ムーアのピアノ伴奏で歌ったフランツ・シューベルトの連作歌曲『冬の旅』の解釈・歌唱は世界的に著名であり、まさに「世紀の録音」と言っても過言ではないでしょう。1962年以来、日本でもたびたびリサイタルを行い、多くの聴衆を魅了しました。1990年代まで彼は高い水準の歌唱力を保ち続け、リサイタルを開催し続けました。
2003年12月6日、ミュンヘンで94歳の生涯を終えました。